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医療関係者の皆様へ


はじめに
喫煙は喫煙者自身と周囲の非喫煙者にさまざまな喫煙関連疾患を引き起こすが、ニコチン依存と心理的依存を生じて強固な習慣性を持つにいたることが多い。
2006年度からはニコチン依存症が治療の対象となる疾病とされ、「ニコチン依存症管理料」が新設されると同時に、保険診療が開始された。現在、ニコチン依存に対してはニコチン製剤やニコチンを含まない内服薬(バレニクリン)による薬物療法が、心理的依存に対しては行動療法が利用されその治療効果を上げている。
こうした個人を対象とした禁煙支援に加えて医療機関における敷地内禁煙など環境的な因子に対する取り組みの強化は、喫煙者の禁煙動機や非喫煙者の受動喫煙防止に有効であり、循環器専門医師として積極的に取り組むべき課題である。
日本における成人喫煙率は年々減少し、厚生労働省からの調査報告では、令和元年には16.7%となった1)。男女別では、男性は27.1%、女性では7.6%であった。最も高い年代は、男性は40歳代で36.5%、女性は50歳代で12.9%であった。加熱式タバコに関しては平成30年より調査が行われており、令和元年では現喫煙者における加熱式タバコの割合は男性で27.2%、女性で25.2%であった。
ニコチン依存症は確立された疾患として捉えられるべきものであり、喫煙はニコチン依存をもとに心理的依存を生じた結果、強固な習慣となり禁煙が困難となる。喫煙による超過死亡は,2010年には全世界で540万人と推計されている。日本国内では少なくとも19.6万人と推計され2)、これは死亡者全体の16.3%にものぼる数字である。

喫煙者では非喫煙者に比べて平均寿命が短く壮年期死亡が多いことは従来から指摘されてきたが、喫煙者の半数が喫煙に起因する死因で死亡することや、喫煙者の40%は69歳までに死亡することから、壮年期の死亡の1/3から1/2は喫煙が関連しているといわれ、喫煙が多くの早死の原因となっている3)
中でも循環器疾患の大きなリスクファクターであることは疫学的研究からも明らかであり、日本で1980年から実施された大規模循環器疾患追跡調査(14年間)のNIPPON DATA80においても観察当初年齢が30~60歳の喫煙者の死亡の相対危険度は2倍以上となっている4)。また受動喫煙の有害性も広く知られるようになってきた。
しかしながら、喫煙と喫煙関連疾患の関連についての知識を問う調査では肺がんと妊娠以外のリスクの増加を知っているものの割合は低い。こうしたことから、禁煙希望者のみならず禁煙を希望しない喫煙者や非喫煙者に対しても、正しい知識と喫煙習慣からの離脱のための広範囲の支援を提供するとともに、喫煙しにくい環境整備による禁煙への動機付けは今後ますます重要となる。